carlos aguirre grupo



22th July 2010 in store

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2,625yen (tax inc.)
RCIP-0144

carlos aguirre grupo (crema)  information : rip curl recordings

カルロス・アギーレ・グルーポの名盤ファースト・アルバム 『クレーマ』 が発売されます。

歌詞対訳:西村秀人、谷本雅世

解説:吉本宏

2010年7月22日 発売

本作は通称“クレーマ”(クリーム色の意)と呼ばれ、彼がそれまでに培ってきた音楽の経験が美しい結晶として音に表れ、オープニングを飾る「Los Tres Deseos De Siempre」には、彼の音楽のエッセンスとグルーポの演奏のこまやかさが美しく映しだされています。

カルロス・アギーレの愛のある助言と友人のイラストレーター、パメロ・ヴィジャラーサの献身的な優しさ
によって、アルゼンチンのオリジナル盤と同じく、彼女の手書きのイラストレーションを1枚ずつ、手作業
で切り抜いた手づくりのジャケット・スリーヴに封入します。

アルゼンチン音楽と文化に造詣の深い西村秀人、谷本雅世のおふたりによって丁寧に訳された、優れた詩人でもあるカルロス・アギーレの美しい詞の世界を堪能することによって、彼の生み出す音楽の世界
をより深く理解することができるでしょう。

 


Carlos Aguirre Grupo 『Carlos Aguirre Grupo』(Crema)             文:吉本宏

アルゼンチンの首都ブエノスアイレスから北西400キロに位置するエントレリオス州の首都パラナ。街はラプラタ河に流れ込む支流のひとつであるパラナ河の東岸に面しており、グアラニー語で“神の母”を意味するという。河幅は広いところでは2キロを超え、街の中心部からでも少し高い建物に登ればパラナ河を眺めることができる。そのパラナ河のバハーダ・グランデと呼ばれるあたりの河岸からほど近いところにカルロス・アギーレは住んでいる。
彼にとって河は特別な想いがある場で、河のそばに住むことは彼の長年の夢だったそうだ。音楽のインスピレイションを河から受けることもあり、パラナ河は彼にとってかけがえのない創造の源だという。彼の紡ぎだす音楽からは、風の音が聴こえ、大地の鼓動が響き、雄大な大河の流れを感じとることができる。

アルゼンチンは、アンデス山脈やパンパ大平原など多くの雄大な自然を有し、かの地で演奏されてきた民族音楽フォルクローレも大いなる自然の影響を受けている。その伝統的なフォルクローレを愛し継承しながらも、そこに自らが影響を受けたジャズやブラジル音楽、クラシックなど様々な音楽のエッセンスを融合させ昇華させたのがカルロス・アギーレの音楽だ。ジャズのフィーリングをもったピアノのタッチ、クラシック・ギターのような旋律やハーモニクスを鳴らす美しい弦の響き、フィールド・レコーディングを採り入れた水の流れる音、光を反射するようなナチュラルなパーカッションなどが、6/8拍子のフォルクローレの伝統的なリズムと重なり、ときにミナス・サウンドのような大らかさを誘い、余白をもった美しく奥行きのある空間を浮かび上がらせる。
カルロス・アギーレは、いま注目を集めるモダン・フォルクロリック・ジャズ・シーンの支柱的な存在で、数多くのアーティストから尊敬されているピアニスト/コンポーザー/アレンジャーであり、自身のグループ、カルロス・アギーレ・グルーポを率いて演奏活動を行っている。
1965年にエントレリオス州のセギーで生まれ、子供の頃からたくさんの音楽の流れる環境で育ち、数多くのフォルクローレの先人たちの音楽に親しんだ。10代の中頃にピアノを本格的に始め、やがてギターやパーカッションも演奏するようになる。古いフォルクローレのアーティストでは、アタウアルパ・ユパンキ、クチ・レギサモンなどを尊敬していると語り、国外のアーティストでは、キース・ジャレットやパット・メセニー&ライル・メイズ、エグベルト・ジスモンチなどに影響を受け、同郷では音に鋭敏な感覚をもつモノ・フォンタナを敬愛し、アカ・セカ・トリオのフアン・キンテーロには強いシンパシーを感じているという。
1986年、ジャズ・ロックのグループ、エル・モリーノへの参加を皮切りに、90年代には、ギタリストのルーチョ・ゴンサレスとのデュオ・アルバムや、リリカルなタッチのピアノ・トリオ・アルバムを吹き込んでいる。2000年代に入り、自身のグループでの最初のレコーディング作品として彼が主宰するレーベル、シャグラダ・メードラから本作『Carlos Aguirre Grupo(Crema)』(2000年)をリリースし、続いてグルーポのアンサンブルを深化させた『Carlos Aguirre Grupo(Rojo)』(2004年)、珠玉のピアノ・ソロ作品『Caminos』(2006年)、雄大なスケール感をもった『Carlos Aguirre Grupo(Violeta)』(2008年)を発表した。また彼はリリアーナ・エレーロやシルヴィア・イリオンドなど多くのアーティストのアルバムにも参加している。

2000年に本国アルゼンチンでリリースされた本作は、通称クレーマ(クリーム色の意)と呼ばれ、彼がそれまでに培ってきた音楽の経験が美しい結晶として音にあらわれ、オープニングを飾る「Los Tres Deseos De Siempre」には、彼の音楽のエッセンスとグルーポの演奏のこまやかさが美しく映しだされている。
流れ星が星屑を煌かせるかのような静かな音のさざなみの中に響くギターの音色に、キケ・シネシの陽炎を思わせる揺らめく繊細なピッコロ・ギターの調べが重なり、盟友フェルナンド・シルヴァのまろやかなフレットレス・ベースが空間に深みと奥行きを生み出す。ギターのハーモニクスのリフレインが眩いエコーを響かせ、カルロス・アギーレの艶めく歌声を迎え入れ、やがて2つのギターはゆっくりと左右に広がり、2人の女声コーラスが穏やかな風のように彼の歌を包みこむ。曲は大きな流れとしてとらえられ、彼はメロディーを主体にしながらフレーズの抑揚に応じて拍が自然に伸縮するような独特の間合いで語りかけるように歌い、ひとつの物語を紡いでいく。優しい河のうねりにも似たしなやかな流れは彼の音楽の大きな魅力だ。まるで、彼がひとりで演奏しているかのような息のあったグルーポのアンサンブルの一体感について、彼は何よりもメンバーの選択と対話が大切だと語った。まず、彼と同じ考え方をもった演奏家を集め、アレンジに関してもつねにメンバーのもつ最良の部分が引き出せるように心がけ、グルーポのメンバーと対話をしながら一緒に表現を探していき、演奏を何度も繰り返すことによってグルーポの一体感が生まれてくるのだという。

このアルバムは音楽だけでなく、ジャケットのアートワークにもカルロス・アギーレの美への信念があらわれている。彼はジャケットはアートであるべきと考え、友人のイラストレイターであるパメラ・ヴィジャラーサが1枚ずつ手描きした水彩画を、小窓を切り抜いた手ざわりのよいクリーム色のクラフト紙のスリーヴの中に挿入し、小さなアート作品に仕上げている。さらにブックレットには訳詞と彼による曲へのコメントが掲載され、まるで魂の独白や、愛のため息、追憶の夢想のように静かに物語を紡いでいく彼の詩人としての卓越した表現力に驚かされる。優しいメロディーに詞が寄り添う「Los Tres Deseos De Siempre」や「Zamba De Mancha Y Papel」、名作「Pasarero」の美しい詩情、さらに、情熱的な「Beatriz Durante」や神秘的な「La Tarka」などの曲調は、詞の世界と分かちがたい魅力をもち、彼の音楽をより深く理解する上で歌詞を知ることはとても重要だ。

2010年の早春に友人がアルゼンチンを旅し、カルロス・アギーレと会って話を訊く機会を得た。彼の言葉から感じるのは、彼が“音楽の持つ力”を強く信じているということだ。仲間との音楽的な対話から音はさらに生命感を帯びていくことや、音楽を介して人と人とがつながっていくことを彼は何よりも大切だと考えている。さらに、彼の自然を愛する想いについて、アルゼンチン盤のCDケースに収められた枯れ葉は、自然破壊に対する彼なりのメッセージとして伐採された木々の葉を封入していることを教えられた。
「私は“芸術家”であり、ただ音楽だけで伝えたいと思っています。私の仕事は“美しさ”を探求することなのです」と彼は語った。その誠実で真摯な音楽観や、人と自然を愛する人生観、繊細なものに美を見出す彼の美意識と感性に強く共感を覚える。彼の言葉をかみしめ、詞を読みながらその音楽を聴いていると深い感動に包まれていく。パラナの街を愛し、ブエノスアイレスの喧騒から離れ、地方にいることに何よりも誇りをもっている彼は、今日も雄大なパラナ河のほとりに佇み、たゆたう河の流れを見つめているかもしれない。地球の裏側で自分の音楽が愛されていることを聞き、彼は「音楽は人と人との出会いの可能性を広げるものだ」と静かに語ってくれた。

                                                      

posted : Thursday, July 22nd, 2010

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