giorgio tuma new album

13th April 2011 in store
production dessinee
2,415yen (tax inc.)
イタリアのレッチェのSSWジョルジオ・トゥマが3枚目のアルバムをリリースしました。
傑作のセカンド・アルバムから新たな進化を遂げた、メランコリックでセンシティヴな
音の世界が広がっています。
in the morning we’ll meet / giorgio tuma 文 : 吉本 宏
まばゆい星が煌く広大な銀河の中に静かな音と光が生まれる。いくつもの星を結ぶ星座をたよりに、ジョルジオ・トゥマの音楽は長い尾をひく青白い彗星のように音の宇宙を自由に旅していく。
アルバムのイントロダクションから、おぼろげなアコースティック・ギターと淡いコーラスが幻想的に漂い、儚く繊細なジョルジオ・トゥマ・ワールドが広がっていく。2009年の秋に、次回作は「よりフォーキーにジャジーにメランコリックに、ホーンやストリングスを加えるアイディアもある」と語ってレコーディングを始めた彼は、約1年の歳月をかけてニュー・アルバム「In The Morning We’ll Meet」を完成させた。ポップなアイディアを詰め込んだ2005年のファースト『Uncolored (Swing’n’Pop Around Rose) 』から、メロディアスな楽曲と生音の響きを生かした2008年の名作セカンド『My Vocalese Fun Fair』のリリースを経て、彼は様々な音のエッセンスを集めて新たな境地へと踏み出した。

Uncolored My Vocalese Fun Fair
“美しいメロディー・ラインと詩的な歌詞がひとつにとけ合ったコーラスの魅惑的な響き”という彼の音楽の魅力が、ストリングスやホーンのアレンジという新たな衣をまとい、さらに映画音楽のようにイマジネイティヴな世界を創りあげる。その鍵となるのが、本作でピアノ演奏とストリングスとホーンのアレンジメントを手がけるジュゼッペ・マガニーノだ。彼はイタリアのレェッチェのジャズ・シーンにおける優れたミュージシャンで、ジョルジオの兄のマルコ・トゥマの紹介によって、ライヴでキーボードを演奏してくれたことをきっかけに交流が始まったといい、彼の繊細なピアノのタッチとアレンジメントを気に入ったジョルジオは、彼に新しいアルバムで一緒にアレンジメントをすることを提案し、意気投合した彼らは、さっそく共同作業を始めたそうだ。才能あるジュゼッペ・マガニーノは鍵盤と管と弦とを繊細かつ優雅に響かせ、ジョルジオ・トゥマの夢想した音楽に新しい息吹を吹き込んでいる。
彼らが志向した音の世界は、早い段階でアレンジを仕上げた2つのトラックに象徴されている。ロシアのファンタスティックなアニメーター、ユーリ・ノルシュタインの世界感をイメージし、靄をまとった中世のおとぎの国のような雰囲気をたたえた#2「Imaginary Soundtrack for Yuri Norstein」や、フランスの印象主義を思わせるピアノの音色が闇の中に精霊を浮かび上がらせるように神秘的に鳴り響く#11「Isaia」は、果てしない映像イメージを喚起させ、聴き手を夢の世界へといざなってくれる。さらに、モーリス・ラヴェルの「Daphnis Et Chloe」へのオマージュだという#7「Innocenza Cetra」や、70年代のイタリアのカンタトーレ(SSW)ルチオ・バティスティのアルバム『Io Tu Noi Tutti』などからインスピレーションを受け、ジョルジオも尊敬するマエストロ、ピエロ・ピッチオーニやエンニオ・モリコーネのアレンジメントを感じさせるシンセサイザーや女性スキャットなどを採り入れた#8「An Enchanting Blue」にも、彼の幅広い音楽の嗜好が表われ、そのサウンドに新たな広がりと深みを生み出している。
今回の魅惑的なコーラスのパートナーには、ガール・ウィズ・ザ・ガンのマティルデ・ダヴォリに代わり、カナダのシンガー、ローリー・カレンを起用した。彼女は2007年のアルバム『Buttercup Bugle』で、元フリー・デザインのクリス・デドリックを共同プロデューサーに迎え、彼女の歌声をドリーミーでポップなアレンジで包み込んだマジカルな世界を創り出した。ジョルジオは、ローリー・カレンにコンタクトをとって「一曲歌ってみないかい」と誘ったところ、快く引き受けてくれたそうで、彼女の参加がなければ今回のアルバムはだいぶ違うものになっていただろうと、彼はその歌の素晴らしさを賞賛している。昨年惜しくも亡くなったクリス・デドリックは、ジョルジオにとっても敬愛するアイドルだということで、#4「New Fabled Stories」の柔らかなホーンのアレンジは、クリス・デドリックへの親愛に満ちたオマージュのように聴こえてくる。

Buttercup Bugle/Lori Cullen Kites Are Fun/The Free Design
ジョルジオのメロディー・メイカーとしてのセンスにあふれた、ニーノ・ロータに捧げられた#3「Marzapane Rota」は、セカンドに収録された「Musical Express」や「St Nicholas Blue Melody」の世界感を思わせ、ニーノ・ロータの映画音楽のように、彼のノスタルジックな思い出を投影しているようだ。さらに、ジョルジオはかつてガール・ウィズ・ザ・ガンに提供した「Hiding Place」の美しさが好きだと語ってくれたことがあったが、その繊細な美しさは、「Oh Marc, Please, Let Me Fly With My lv」に確かに受け継がれている。そして、#14「Sitting On The Little Church Steps」や、#16「When I Sing Your Words All Around Us Is Magic」のメロディーには、彼のソングライターとしての温かな優しさがにじみ出ている。
彼の音楽がメランコリックな陶酔感をたたえているのは、彼の切ないメロディーに加えてワルツのリズムを好んでいるところにも理由がある。彼はワルツのリズムについて「ゆったりしているところが好きなんだ。ワルツのリズムに乗せると、メロディーが直接心に届くように感じるんだ」と話してくれた。さらに、曲づくりについて彼は、ギターのコードから始めてメロディーを感じたら曲にし、それから詞を手がけるアリス・ロッシに曲のフィーリングやイメージを話して、歌を完成させるという。今回のアルバムについて彼は、「大切な愛の物語のサウンドトラックになりうるよ。愛がもたらす幸せな瞬間、夢、バラ色の日々、そして、もしその愛に破れた時には、この作品はメランコリックで悲哀に満ちたブルーな印象ももたらしてくれる。でも、そこには夢や素晴らしい記憶もある」と語り、その中心には普遍的な“希望”や“愛”がキーワードとなっていることを教えてくれた。
ジョルジオ・トゥマが様々な音楽から受ける影響は、純度の高いなエッセンスとして彼の中に蓄積され、すべて彼のフィルターを通して驚くほどに無邪気に自然な形で表われ、誰のものでもないジョルジオ・トゥマの音楽として美しく結実している。彼の音楽を聴いていると、彼は音楽を取り巻く環境や音楽の流行などに関係なく自分の感覚に忠実に、まるで自分のお気に入りのパステル・カラーのペンで一日中好きな絵を描いている子供のように、感受性の赴くままに音楽を創っているように映る。彼が時間をかけてじっくりと取り組んだ新作には、彼の音楽に対する接し方が見えてくる。彼の音楽には目の前の風向きに左右される波とは無縁な、海底の奥深くを流れる静かな潮流のようなゆるぎのない芯の強さを感じさせる。
